突如として人生の岐路に立たされた元女優の主人公サンオクが、捨て去った過去と向き合いながら、かけがえのない心のよりどころを見出していく一日の出来事を描出した本作。ホン監督の作品としては異例ともいえるドラマチックなストーリー展開に「ホン・サンスの最も感動的な作品の1つ」(Sight and Sound)と評され、公私にわたるパートナーのキム・ミニがプロダクション・マネージャーを務めたことも話題の一作である。
生々しくスリリングな会話を捉えた約12分間にわたる長回しショット、劇中の“告白”によって明かされるタイトルの意味に心揺さぶられながら、複雑で豊かな感情揺らめくサンオクの心の旅に、ホン・サンス監督の新境地がうかがえる珠玉のドラマが誕生した。
長年寒々と心の痛みになっているのだとしたら、
この映画たちはきっと、それを静かに溶かしてくれる。